Research Abstract |
複素多様体の分岐被覆と基本群を研究した。代数多様体の双有理幾何学の研究において、一つの有力な方法は、射影空間上の有限分岐被覆を研究することである。しかるに、それらの被覆の分岐集合は、しばしば取り扱うには複雑すぎることがある。そこで上野亮一氏と共に、次の定理を証明した。「定理1.任意のn次元代数多様体Vに対して、Vと双有理な正規射影代数多様体WとWからn次元射影空間への有限射Fで次の条件を充たすものが存在する。Fの分岐集合は、無限遠超平面と、アファイン座標で次式で定義された超曲面の和集合である。x_n=f_j(x_1,・・・,x_<n-1>),(j=1,・・・,N).ここでf_jはn-1変数の多項式である。」この定理の応用がいろいろ期待される。この定理を逆にWとFの構成に応用するために、この定理における超曲面の補空間の基本群の計算が必要である。ザリスキー,ファンカンペンの方法があるものの、大域的データの処理が一般には困難なので、いろいろな具体例に直接あたっている。一方、大域的代数多様体と対極にある正規特異点の近傍空間に対し、上の定理の証明と同様の方法で次の定理を証明した。「定理2.任意のn次元正規特異点(X,x)に対し、(X,x)からC^n内の多重円板(Δ^n(O,ε),O)上への固有有限正則写像μで、その分岐集合が次式で定義される超曲面に含まれるものが存在する。(Z_n-h_1(Z′))・・・(Z_<2n>-h_N(Z′))=0。ここにh_j(Z′)はh_1(O)=OをみたすZ′=(Z_1)・・・Z_<N-1>)の正則関数である。この定理における超曲面の補空間の基本群の計算は容易である。さらに、基本群から推移的置換群上への準同型写像の構成も、一定のアルゴリズムを用いて出来る。従って、グラウエルト,レンメルトの定理より、逆にn次元正規特異点と、その準同型をモノドロミ-とする、多重円板への固有有限正則写像を構成出来る。他にも、いろいろな応用が期待される。
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