Research Abstract |
甲子旭岳では,前期はソレアイト系列玄武岩質安山岩,後期はカルクアルカリ系列安山岩が主に噴出した.本研究では,これらの噴出物をもたらしたマグマだまりの配置やその中で進行した現象を推定した.尚,本火山ではカルクアルカリ系列初生マグマはソレアイト系列マグマの固結物の再溶融で生成したと考えられている. 1.前期噴出物:斑晶鉱物と同じ鉱物組合せの高温(1100℃程度)で結晶化した斑れい岩質包有物の存在,CAMSプロットで約8kbのコーテクティックに沿うことなどは地殻中部域のマグマだまりで結晶化が進行したことを示唆する.一方甲子旭岳北壁の連続露頭の溶岩の全岩SiO_2量が時間的に連続的に増減すること,輝石と斜長石斑晶にガラス包有物や弱い塵状包有物帯が見られること,斑れい岩質包有物に主にかんらん石と斜長石からなる急冷細粒相が見られることは結晶化中のマグマ溜まりに,より苦鉄質なマグマが注入しことを示唆している.前期には地殻中部域(8kb以浅)にマグマだまりが形成され,結晶化(約1100℃)及び,より深部からの未分化マグマの注入が行われたと考えられる. 2.後期噴出物:低温(800℃程度)で結晶化したと考えられる集斑晶はデイサイト質マグマの結晶化を示唆する.一方苦鉄質包有物の存在,バイモーダルな輝石斑晶の組成分布(約800と1100℃の晶出温度),斑晶の溶融組織や顕著な累帯構造はデイサイト質マグマに,より苦鉄質なマグマが混合したことを示唆する.苦鉄質側マグマは,晶出温度1100℃程度の輝石を晶出していたものとMg-v>80のかんらん石を晶出していたものの2種類ある.後期には上位にデイサイト質マグマだまり,下位に玄武岩質マグマだまり(8kb以浅)が配置され,各々別々(約1100℃,800℃)に結晶化を行っていた.さらにより苦鉄質なマグマの注入が起こり,3種類のマグマが混合し噴火に至ったと考えられる.
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