フラーレンC_<60>、C_<70>の単結晶X線回折による双晶、構造、相転移の研究
Project/Area Number |
07213206
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀内 弘之 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80029892)
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Project Period (FY) |
1995
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1995)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
Fiscal Year 1995: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
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Keywords | フラーレン / C_<60>、C_<70> / 単結晶X線回折 / 相転移 / 双晶 / 積層不整 |
Research Abstract |
純粋なC_<60>、C_<70>の単結晶についてX線回折法によりその結晶構造上の特徴について考察した。 C_<60>は、気相成長により直径数mmの大きな良質な結晶が得られるが、注意深く観察すると一般的に複雑な形態であり単結晶ではない。単結晶用カメラ法やX線回折計による解析の結果、これらはいずれも{111}面を双晶面とする双晶の関係を示す事を明らかにした。波長1.5Å程度のX線による回折では、双晶区域間での干渉を示す散漫散乱が殆んど見られないことから、これらの双晶区域は数千Å以上の巨視的なものと考えて良い。 一方C_<70>については、単結晶X線カメラ法による回折実験によると、C_<70>分子のhcp積層方向に対応する回折に例外なく著しい散漫散乱が観測されることから、顕著な積層不整が存在することが分かる。また、その散漫散乱強度分布の特徴から、局所的には三方晶系となるfccの部分も多いと見られる。単結晶を用いた-130℃の低温実験では、室温の六方晶の格子は歪み、そのa_1とa_2の長さに明瞭な差が現れ、空間群P6_3/mmcの構造では見られない新しい回折斑点が観察されることから、単斜晶系などの低対称の構造に転移しているとみられる。また、昇温すると、70℃付近で六方晶のc軸が減少し、a軸が増すと云う興味深い現象が見られる。この変化には昇温と降温にヒステリシスが観測される。これは、楕円体であるC_<70>分子の長軸が結晶軸cに対する歳差運動が顕著になる結果と解釈できる。このような歳差運動が著しくなるとC_<70>分子回転楕円体の長軸方向が本来の結晶格子に対して(001)面内に倒れ、この現象がその付近で協同的に発生すると、恰も本来の結晶軸cが90°方向を変えた関係の双晶が発生することが期待される。実際に単結晶用X線カメラ法による回折図形観察により、軸率c/aが変化した後、結晶軸cが2a_1+a_2方向やそれと結晶学的に等価な方向に転換する現象を捉えることが出来た。 以上のようにC_<60>、C_<70>の構造には興味深い問題が多々残されており、更に綿密な単結晶によるX線回折実験が要求される。
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Report
(1 results)
Research Products
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