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¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 1995: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
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Research Abstract |
フッ素化合物は機能性材料並びに医薬・農業の両面で急速にその価値が認識されつつあるが,ジフルオロメチレン基を有する化合物の合成例は少なく,簡便な合成法の開発が望まれる。本研究ではα,α-ジフルオロ-γ-ラクトンをジフルオロメチレン化合物の合成中間体としてとらえ,特にキラル体合成を展開することを念頭に,その系統的合成法を検討した。ジフルオロメチレン化合物の前駆体としては最も入手容易なα-ハロ-α,α-ジフルオロ酢酸エステルを用い,分子内ラジカル環化を鍵にα位にジフルオロメチレン基を有するキラルラクトン合成を目指した。分子内ラジカル環化反応は中性条件下反応が進行し,クリーンで大変魅力的な反応である。ところがエステルではα位にラジカルは発生するものの環化反応が起こらず,α-ブロモ-α,α-ジフルオロ酢酸アリルエステルをトリメチルシリルアセタールに変換してはじめて分子内ラジカル環化に成功した。脱保護の後PDC酸化して目的とする新規α,α-ジフルオロ-γ-ラクトンを合成することができた。α-プロモ-α,α-ジフルオロ酢酸アリルエステルから発生させたラジカル種では分子内環化反応は起こらず,トリメチルシリルアセタールから発生させたラジカルが,分子内オレフィン部に付加するための必須の活性種になることを見いだしたわけである。この成果を受けて,リパーゼ不斉アシル化反応で調製したキラルアルコールから新規キラルラクトンを合成することにも成功した。 さらにエステルからアミドに変化させ分子内ラジカル環化を検討した。その結果,ニトロベンゼンをメディエータにして電解還元を行いラジカル種を発生させると,目的の分子内ラジカル付加反応が進行し,α,α-ジフルオロ-γ-ラクタムを得ることができた。反応は位置選択的であり5員環ラクタムのみが得られたが,シス-トランスの立体選択性は1:1であった。ジフルオロメチレンラジカルを分子内のオレフィン部位にラジカル付加させる場合,目的とする小員環化合物がラクトンかラクタムかでラジカル活性種を変化させる必要があることが明らかになった。本研究により光学活性α,α-ジフルオロ-γ-ラクトンならびにγ-ラクタムの系統的合成法を確率できたものと考えている。
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