Research Abstract |
有機ゲルマニウム-ゲルマニウム(Ge-Ge)結合の基本的な化学を研究する目的で環歪みで活性化されたGe-Ge結合をもつ3,4-ベンゾ-1,1,2,2-テトラエチル-1,2-ジゲルマシクロブト-3-エン(1)を合成し、その物性および反応性等を検討した。 1は1,2-ビス(ジエチルゲルミル)ベンゼンを四塩化炭素で塩素化して得られる1,2-ビス(クロロジエチルゲルミル)ベンゼンをトルエン中、金属ナトリウムと反応させて合成した。1は極めて反応性に富み、徐々に酸化されてジゲルモキサン結合を持つ2を与えた。また、単体イオウとも反応し、Ge-Ge結合にイオウが挿入した3を生成した。1をトルエン溶液として脱気封管中、室温から60℃程度で反応させると、トルエンやTHF等に可溶な数平均分子量が数十万程度の開環重合体を生成した。次に、1を脱気封管中、160℃で加熱すると4,5-ベンゾ-1,1,2,2,3,3-ヘキサエチル-1,2,3-トリゲルマシクロペント-4-エン(5)および3,4,6,7-ジベンゾ-1,1,2,2,5,5-ヘキサエチル-1,2,5-トリゲルマシクロヘプト-3,6-ジエン(6)が生成した。一方、パラジウム0価錯体を触媒として、フェニルアセチレンを反応させると、室温で5,6-ベンゾ-2-フェニル-1,1,4,4-テトラエチル-1,4-ジゲルマシクロヘキサ-2,5-ジエン(9)が高収率で生成した。他方、1にパラジウム触媒を加えて、反応させると、Ge-Ge結合でメタセシス反応が進行して二量体14が高収率で生成した。さらに、1を脱気封管中、パラジウム触媒と共にさらに高温に加熱すると14とは異なる二量体15がその異性体16および17と共に生成した。これらは中間にゲルミレン錯体18を経由して生成したとして理解できる。
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