Research Abstract |
火砕噴火では噴火様式が様々に変化することがある.こうした噴火様式の変化が起こる原因は解明されていない.本研究では珪長質マグマの噴出物の斑晶鉱物の中に含まれるガラスインクルージョンの含水量を測定し、噴火直前のマグマの含水量,液相の化学組成を見積もり,噴火様式の変化に伴いどのように変化するかを検討した. 分析に用いた岩石は北海道道南西部のクッタラ火山群のカルデラ形成期の噴出物である.クッタラカルデラは約42,000年前に活動し,大規模な噴煙柱を形成し,降下軽石を放出するプリニ-式噴火の後,噴煙柱の一部が崩壊し,降下軽石と同時に火砕流を放出する火砕流を伴うプリニ-式噴火,マグマ水蒸気爆破がおこっている. 各堆積物中の石英および斜長石中のガラスインクルージョンの含水量を顕微赤外線スペクトロメータによって計測した結果,プリニ-式噴火0.66-3.62%,火砕流を伴うブリニ-式噴火の降下軽石:0.80-2.82%,火砕流:0.27-1.54%という値が得られた.また,推定されるメルトの組成はプリニ-式噴火でSiO_275%,pfa火砕流を伴う噴火でSiO_269%である.この噴火では終盤になるほどマグマの含水量が減少し,化学組成は苦鉄質に変化している事が明らかとなった.揮発性成分がH_2Oのみであってと仮定するとマグマはマグマ溜まり中では発泡していたとは考えにくい.これは噴火が珪長質マグマによって自発的におきたものではなく,噴火が開始するためには他の条件が必要となる.この噴火の噴出物はマグマ混合をうけた履歴を持っており,別のマグマから揮発性成分が添加された可能性が高い.また,噴火様式が,プリニ-式噴火から噴煙柱としては不安定な火砕流を伴うプリニ-式噴火に変化したのは含水量から後者のほうが発泡深度がより浅かった為,地表付近の地質構造の影響を受け易かった可能性がある。
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