ピコ秒過渡吸収二色性の測定による溶液中のイオン対の構造緩和過程の検討
Project/Area Number |
07228235
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮坂 博 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (40182000)
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Project Period (FY) |
1995
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1995)
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Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 1995: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Keywords | 電子移動 / イオン対 / ピコ秒分光 / 溶媒和 / 過渡二色性 |
Research Abstract |
溶液は多くの化学反応において最も一般的な反応場であり、反応の選択性を決める溶媒の因子に対して、多くの研究がなされてきた。本研究では、ピコ秒過渡吸収二色性を測定することにより、溶液中で分子間電子移動によって生成するイオン対状態の回転緩和過程及び対内での反応性に最も関連した相対配置の緩和過程に対する溶媒効果を検討した。更にこれらのイオン対状態の回転緩和過程を、イオンあるいは中性分子のものと比較することにより、イオン対に対する溶媒和の特殊性について考察を行った。過渡吸収およびその二色性の測定は、自作のピコ秒YAGレーザー分光システム(半値幅15ps)を用いて行った。 基底状態で生成する弱い電荷移動錯体を光励起し、種々の溶媒中でイオン対の回転緩和を測定した。その結果、イオン対は相互の相対配置を保ったまま回転拡散を行い、イオン対の寿命程度の間は構造緩和が起こらないことが判明した。従来から弱い電荷移動錯体を光励起した場合に生成するイオン対は、化学反応性が小さいことが示されていたが、その理由はイオン対内での相対配置の緩和が著しく起こりにくいことに起因することが、本研究の結果から初めて明らかになった。また、イオン対の回転緩和時間は、特に極性溶媒中では他の同程度の体積を持つ溶質と比べると著しく長い事がわかった。 比較のために、いくつかの極性溶媒でピレン等の溶質を二光子イオン化させ、カチオン、励起状態のそれぞれの過渡二色性を測定した。その結果は、粘性にも依存するが、両者とも約20〜30psの時定数で回転緩和がおこり、カチオンと励起状態の回転緩和時間の違いは、我々の測定装置の時間分解能では観測されなかった。すなわち、イオン対における相互運動性の低下の原因は、単に溶媒がたかり体積が増大するのではなく、イオン対の周囲の溶媒の再配向に起因する大きな誘電的なトルクに起因することが判明した。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)