Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 1995: ¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
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Research Abstract |
希土類錯体の4f電子は,ユニークな挙動をもっているために,ある時は4f電子が結合に関与しているように見え,ある時はそうでない。4f軌道の特徴を,相対論的第一原理分子軌道法(DV-Xα法)の結果を用いて議論し,この理由を明らかにした。 1.4f電子の特徴 4f電子の空間分布,エネルギー分布,他の電子との協調や競争などを解明し,4f電子の特徴を明らかにした。希土類の4f電子が化学結合に“参加"していることは,熱力学的データや理論計算などによって明らかにされている。しかし,4f電子がどのような“働き"をしているかは,場合によって大きく異なる。他の元素と違って,主役になるべき4f軌道の空間分布が控え目であるために,5d軌道や内殻の5s,5p軌道が共に結合に関与していることが特徴である。このように主役の多い“軌道重なりの複合体"が形成されるので,共有結合性とイオン結合性の両立した“混合相互作用"が特徴となる。さらに両者が拮抗しているので,対象にする性質・反応によって,イオン結合性・共有結合性のいずれの面も現れうる。 2.4fバンド幅と共有結合性の強さ 4fバンド幅の狭いことが,4f電子が結合に関与していないことの証拠とされているが,4f電子の特徴がどのようにバンド幅に現れるかを明らかにした。配位イオンの作る静電場は,3d化合物同様に希土類錯体でも有意ではなく,共有結合に起因する配位子場が決定的であった。さらに,原子間のポテンシャルが錯体生成の際に低下して配位子場分裂を引き起こすことが明らかになった。希土類錯体では,原子間のポテンシャル低下は,イオン殻の接触により打ち消されている。希土類錯体は,原子内部を調べる解析法を用いると,共有結合性が明白に見られ,原子間を調べるとイオン結合性となることを明らかにした。
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