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¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
Fiscal Year 1995: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
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Research Abstract |
溶液内での金属イオンの錯形性について体系的な考察を行うには,種々の溶媒中での類似の金属イオンについて錯形成を詳細に調べ,その比較から特徴を把握し理論を構築していくことになる。希土類金属は15種ほどもイオンサイズが徐々に変るという,他の同族金属には絶対に見られない特徴をもつ。この特徴を生かして本年度はランタノイド(III)の錯形成に与える有機溶媒の効果を調べる目的で,ランタノイド(III)のチオシアン酸イオンとルイス塩基であるトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)によるベンゼン,クロロベンゼン,1,2-ジクロロエタン,1,1,2,2-テトラクロロエタン,四塩化炭素,ペンタクロロエタン,クロロホルム,ヘキサンへの抽出挙動を調べ,各抽出種の抽出定数を算出した。その結果次のことが分かった。 1)主な抽出種は軽希土ではLn(SCN)_3・4TOPOであるが,重希土ではLn(SCN)_3・3TOPOが主である。中希土ではこれら2種の化学種が混合している。その混合割合は溶媒によって異なる。 2)溶媒の極性が小さくなるほど,より原子番号の大きい元素まで抽出種はLn(SCN)_3・4TOPOが主になる。 3)Ln(SCN)_3・4TOPOの抽出のされやすさのランタノイド間の差はLn(SCN)_3・3TOPOに比べて小さい。(TOPOの数が多くなるほど,ランタノイドの個性が失われるため) 1)〜3)から,極性の小さい溶媒を使うと近接する2つのランタノイド間の分配比に差がなくなるが,極性が高く,ルイス塩基との相互作用の大きい溶媒では金属間の分配比の差は大きく分離効率がよい(例:一定条件下での分配比はヘキサンやCCl_4ではLa〜NdとTm〜Luを除き変わらないが,1,2-ジクロロエタン等ではSm〜Gdだけが変化しない)ことが合理的に説明できた。 以上の結果は溶液内錯体に対する溶媒効果の基礎となる貴重なデータである。
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