Research Abstract |
本重点研究では,強相関伝導系の中心であるところの,重い電子系について,とくに,(1)メタ磁性(2)近藤絶縁体(3)超伝導を3本の柱としているが,本公募研究では特に,2番目の近藤絶縁体の性質を理論的にきちんと調べることに重点をおいて研究した。 最近明らかになったとおり,空間次元無限大の極限では,Hubbard模型,周期Anderson模型等は一般化された1不純物問題を自己無撞着に解くことに帰着される。本研究では,この方法を軌道縮退のない周期アンダーソン模型に適用し,1不純物問題については,伝導電子部分を有限系とした系を厳密対角化法によって解いた。本年度は,近藤絶縁体に対応するhalf-filledの場合について,磁化過程および1電子スペクトル等の計算を行った。その結果,(1)近藤温度程度の臨界磁場で,絶縁体から金属への転移が起こることを見いだした。これは,1次元近藤格子系に対するYuとWhiteの主張とは異なっているが,3次元系はここでの結果に近いものと思われる。また,(2)近藤絶縁体のエネルギーギャップが磁場により消失する様は,YbB_<12>についての実験結果とよく対応している。さらに、(3)VanVelck帯磁率が多体効果によって増強される様子を明らかにした。 数値計算は昨年1月に東京大学物性研究所に導入された富士通製並列スーパーコンピュータVPP500を用いて行った。データ解析は既存のワークステーション(WS)およびパソコン(PC)上で行った。WSを増強するため,ハードディスクを購入した。また,結果の図の出力のためのカラーのインクジェットプリンターを購入した。消耗品により,PCをX端末にするためのソフトウェア等を購入した。謝金(研究補助)は,大学院生による計算補助に対するものである。
|