高分子の結晶化に伴う密度および配向ゆらぎの成長過程
Project/Area Number |
07236210
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今井 正幸 東京大学, 物性研究所, 助手 (60251485)
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Project Period (FY) |
1995
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1995)
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Budget Amount *help |
¥2,900,000 (Direct Cost: ¥2,900,000)
Fiscal Year 1995: ¥2,900,000 (Direct Cost: ¥2,900,000)
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Keywords | 高分子 / 結晶化 / 誘導期間 / ポリエチレンテレフタレート / 小角中性子酸散乱 |
Research Abstract |
高分子物質を非晶状態から結晶化させると、ランダムに絡み合った一次元の高分子鎖が,秩序だった格子を組み始めるいわゆる、結晶核形成過程が観察される。この結晶核形成には系が結晶化条件に達してから実際に結晶化が開始するまでに誘導期間と呼ばれる過渡的な時間の経過が必要となる。我々は、従来殆ど解明されていなっかた結晶化誘導期に着目して研究を進め、この結晶化が開始する以前の段階においてメゾスコピックスケール(〜10nm)で密度と配向のゆらぎによる新しい秩序化過程を見い出した。当該年度においては、このメゾスコピックスケールでの新しい秩序形成と高分子の分子レベルでの構造形成を結び付ける目的で重水素化ラベル中性子小角散乱法により、結晶化誘導期における分子鎖形態、特に配向秩序化の鍵となる分子鎖の剛直性(持続長)に着目して研究を進めた。その結果、結晶化誘導期において、分子鎖の持続長が10%程度増大すること、およびその持続長の値が配向秩序化(isotropic-nematic転移)を行うための条件を満たしていることが明らかになった。これは、ガラス状態ではランダムコイルとして存在する分子鎖が結晶化誘導期においてその持続長を増大させるため、排除体積効果により配向秩序化が進行し、分子鎖が平行配向するようになり、この後分子鎖のパッキングが始まり結晶化に進むという我々のモデルを裏付ける結果であった。さらに、この誘導期における持続長の増大は、分子鎖のゴ-シュ形からトランス形へのコンフォメーション変化が原因だと考え、DSC(示差熱分析)と赤外吸収分光の同時測定によりトランスコンフォメーションが誘導期において増大していることを直接的に明らかにした。これらの研究により、高分子の結晶化においては従来考慮されていなかった配向と密度の2つのオーダーパラメーターが重要な働きをしてメゾスコッピクな秩序化を進めることおよびその分子論的起源が明らかになった。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)