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¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 1995: ¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
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Research Abstract |
液体は、一般に、均一、等方的な分子凝集状態と考えられており、過冷却状におけるガラス転移温度はすべての分子が動かなくなる温度とみなされている。我は、過冷却状態ではむしろ、"液体は秩序構造クラスターの凝集体であり、系の性質はクラスターの大きさ、クラスター内分子配置の秩序度などにより支配される"と考える立場から、研究を進めた。 1)ジブチルフタレートの不可逆的緩和過程を温度一定条件下で追跡し、緩和関数の非線形性が平衡の平均緩和時間の非アレニウス性(フラジル性)に原因することを見出した。また、クラスター分布を考慮した緩和の計算機実験を行い、クラスター分布の形は時間とともに大きく変化するという"不可逆過程の特性"を示唆する結果を得た。 2)1,3-ジフェニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの液体と結晶のガラス転移は比較的近い温度で出現することが確認された。これは、液体における分子再配置運動の活性化単位が結晶におけるそれに近いことを意味し、液体における活性化単位を考察するうえに重要な知見を与えるものである。 3)3,3′-ジメトキシ-4,4′-ビス(2,2′-ジフェニルビニル)ビフェニルの過冷却状態における結晶核生成温度領域をDSCにより検討し、核生成がガラス転移温度345Kより175K低い170Kでも進行することを発見した。これは、ガラス転移温度で凍結する分子再配置運動はクラスター内の分子であり、クラスター外の分子の運動が核(一種のクラスター)の生成を促進することを示している。 4)トリフェニルエチレンの過冷却状態において、結晶胚凝集に基づく、新しい結晶化過程を発見した。結晶胚は液体中の構造クラスターとして常に存在しているものと考えられ、その解明を促すものである。
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