Research Abstract |
我々はこれまでに,心筋細胞に機械的伸展負荷を加えると,蛋白リン酸化酵素の活性化,前癌遺伝子及び胎児型遺伝子の発現に続いて心肥大が形成され,伸展した心筋細胞から放出されるアンジオテンシンII(AngII)が肥大反応の一因であるものの,AngII以外の液性因子の関与も示唆されることを明らかにしている。今回,伸展負荷によって生じる心肥大におけるエンドセリン(ET)とAngIIの役割を解析した。ET受容体(ETaR,ETbR)の特異的阻害薬(BQ-123,BQ-788),AngII受容体(AT1-R,AT2-R)の特異的阻害薬(CV-11974,PD123319)で前処置したラット新生仔培養心筋細胞を伸展し,Raf-1kinase(Raf-1),MAPkinase(MAPK)活性,フェニルアラニン取り込みを測定した。さらに,伸展した心筋細胞でのET-1遺伝子を解析し,培養液中のET-1,AngII濃度を測定した。その結果,伸展負荷によってRaf-1→MADKの一過性の活性化に続いて,24時間後のアミノ酸の取り込みが亢進した。これらは,BQ123,CV-11974あるいは両者の併用による前処置でそれぞれ,36〜53%,43〜57%,72〜85%抑制されたが,BQ788及びPD123319による前処置は全く影響しなかった。また,10分間伸展した心筋細胞培養液中で,それぞれ10pM,160pMのET-1,AngIIを検出し,30分〜60分の伸展負荷でET-1mRNAの発現が一過性に亢進した。以上より,伸展負荷により心筋細胞から直接放出されるET-1,AngIIが,ETaRとAT1-Rを介し情報伝達系を活性化し,心筋細胞肥大を引き起こすことが判明した。さらに,伸展負荷でET-1産生も亢進することも明らかとなった。
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