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¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1995: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
心筋ミオシン頭部で修飾されたアクチンフィラメントは溶液中で束をつくる.これは束形成速度が心筋ミオシン頭部では骨格筋ミオシン頭部で修飾されたものより速いためである.また,この束はMBS処理して重合能を奪ったアクチンモノマーを加える事により阻害されることを光散乱を用いて示した.我々はクライオ電子顕微鏡像からの三次元再構成により,このメカニズムを研究した. 心筋ミオシン頭部で修飾されたアクチンフィラメントと,MBSアクチンを加えたものを液体エタンで急速凍結し,電子顕微鏡像を撮影した.この方法は染色・固定を行う場合に比べ,試料を生のまま観察できるという特色がある.撮影に用いた電子顕微鏡は冷電界放射型電子銃を装備した日立HF2000で,従来の電子顕微鏡に比べて高いコントラストを得られ,氷包埋の試料の観察に威力を発揮することを既に示している.得られた電子顕微鏡写真をCCDカメラで計算機に取り込み,試料のらせん対称性を利用して三次元構造を求めた.その結果,MBSアクチンを加えた試料には,心筋ミオシン・アクチンだけからなる試料には見られない構造が見られた.これはミオシンの軽鎖ドメインの先端に相当する.この構造が加えたMBSアクチンであるとすると,ミオシン軽鎖ドメインにMBSアクチンが結合することが示されたことになる.隣り合ったフィラメントのミオシン同士,またはミオシンとアクチンが相互作用して出来た束が,MBSアクチンによって阻害され,束が解ける様子がはじめてクライオ電子顕微鏡法で可視化されたといえる.軽鎖ドメインとアクチンの相互作用はミオシンとアクチンの滑り運動に直接関係あるものかどうか現在論争中であり,滑り運動におけるミオシン軽鎖の役割は大きな関心を集めている.この研究が心筋ミオシンのみならず,滑り運動一般のメカニズムにインパクトを与える可能性は大いにあるであろう.
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