Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
1。造血系細胞における厳密な外来遺伝子の発現抑制を可能にする系を用いてヒトpRBcDNAをサイトカイン依存性リンパ球細胞株を、Ba/F3に導入し、誘導時において非誘導時の50倍程度のpRB蛋白蓄積をしめす安定変異株複数樹立した。これら細胞の細胞周期進行過程、細胞増殖曲線等を検討した結果、pRB非誘導・誘導における有意な増殖能変化は認められなかった。2。pRBはリン酸化を受けて不活化されるため、次にサイクリン-CDKの標的となりうる18個のセリン、スレオニン残基をアラニンに置換した人工改変pRB分子を作製した。この人工改変pRB分子をBa/F3細胞株に導入し細胞増殖に及ぼす効果を検討したところ、わずかな細胞増殖抑制が認められるのみで、細胞周期は停止することなく進行した。3。上記発現誘導系を用いて、pRB関連分子をBa/F3細胞株に導入し蛋白誘導を行なったところp130を導入発現することによりきわめて強力な細胞増殖抑制活性が認められた。4。その活性がp130により抑制されることが知られているE2F4をBa/F3細胞株に導入し蛋白誘導を行なった。その結果、E2F4を構成的に発現させることにより、Ba/F3細胞のサイトカイン依存性が消失し、細胞は増殖因子非依存的増殖応答能を獲得した。本研究から、これまですべての体細胞増殖におけるブレーキ分子として細胞周期制御に普遍的に関与すると考えられてきたpRBがサイトカイン依存性の造血系細胞増殖制御に際してきわめて限定的な役割しか担っていないことが明らかになった。本研究はpRB不応答性細胞の存在を示した最初の報告である。さらに、この細胞の増殖はpRB関連分子のひとつであるp130により強力に抑制された。この事実はある種の血球系細胞において、pRBではなくp130を負の制御因子として有する細胞周期制御機構の存在を示している。この結論は、p130の標的分子と考えられているE2F4の異所性発現によりBa/F3細胞が増殖因子非依存性増殖能を獲得することからも強く支持された。
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