Research Abstract |
紅色光合成細菌Chromatium tepidumはその生育温度が50℃にも達する耐熱性種である.本研究は,この好熱性光合成細菌の反応中心複合体の立体構造を、これまでに解明されている。Rhodopseudomonas viridisやRhodobacter sphaeroidesなど常温菌の反応中心複合体の立体構造と比較することによって,膜結合性タンパク質における熱安定化の機構を理解しようとするものである.そのために,C.tepidumの反応中心複合体のX線結晶構造解析による立体構造決定に着手した. C.tepidumの反応中心複合体は界面活性剤LDAO(N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド)で可溶化し,後にこれをβ-オクチルグルコシドに置き換えて結晶化に用いた.沈殿剤にPEG4000を用いて蒸気拡散法で結晶化を行い,X線回折実験に達する大きさの結晶を得ることができた.結晶は斜方晶系,空間群P2_12_12_1に属し,格子定数はa=136Å,b=197Å,c=82Åであった.非対称単位中に1分子を含むと考えるとV_M値は4.3Å/Daとなり,膜タンパク質結晶として妥当な値をとることになる.高エネルギー物理学研究所・放射光実験施設のシンクロトロン放射光で,3Å分解能以上の回折を観測することができた.シンクロトロン放射光を用いてnative結晶の回折強度を測定したところ,3Å分解能までの17,724個の独立な反射を収集することができ,等価な反射の一致度Rmergeは0.095であった.しかし,そのデータは測定中にX線によって結晶が損傷を受け,その測定精度が十分でないことがわかった.また,最近,界面活性剤にβ-デシルマルトシドを用いることによっても良好な結晶が析出することがわかった.このような界面活性剤の種類の違いが.膜タンパク質結晶化においてその結晶性に及ぼす影響を詳細に検討し,より高分解能の回折を与え,かつX線による損傷が小さい結晶を選んで,今後の構造解析に用いるつもりである. C.tepidumの反応中心複合体は,すでに構造が明らかなRps.viridisの反応中心複合体と同様,H,M,L,チトクロムという4つのサブユニットから構成されている.現在のX線回折データを用いて,Rps.vividisの反応中心複合体の構造をモデル分子とした分子置換法を適用したところ,右図に示すような予備的な結晶内パッキングの解を得た.今後,回折データを再測定して構造解析を進める予定である.
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