Research Abstract |
瀬戸内海東部の小豆島から播磨灘にかけての海域で発生した赤潮による大きな養殖漁業被害に関連して、今後の対応に資するため、ギムノディニウム多糖の毒性を明らかにすることを中心に本研究計画が追加採択された。研究室保存株の微細藻Gymnodinium A3の無菌株を調製し、これを多糖生産株として維持し使用した。最初に微細藻の培養条件についてのデータを得るため、グロースキャビネットを用いて温度、光、通気条件培養時間を検討した結果から、培養は岡市らによる海水栄養塩添加培地(ESM)を用い、21℃、3500Lxで行った。培養液を濾過し藻体を除いて得た上澄液からエタノール沈殿、Cetavlon沈殿により酸性多糖を集めた。透析後、凍結乾燥して多糖標品を得た。これはDEAE-celluloseカラムクロマトにより0.4M NaClで溶出される画分が最も多く、分離・精製した多糖は、超遠心及びセルロースアセテート膜電気泳動分析で均一性の高いことが認められた。精製多糖の培養細胞毒性試験には、生細胞の測定をMTT法を用いてCC50値で判定した。本多糖は、MRC-5>200,MDCK>200,Vero=160,MKN-28=32,MT-4=2.67,Molt-4=13.65,CEM=5.04,U-937=17.30ug/mlの濃度でそれぞれCC50値を示した。対照として用いた多糖(DS5000)は、使用した細胞系に対して100μg/mlの濃度で全く細胞毒性を示さず、これまでの試験では、微細藻の作る他の多糖にもこれらの培養細胞に対して毒性を示すものは認められていない。平成7年7-8月の播磨灘における赤潮では、播磨灘でいつも赤潮を起こしているChattonella antiqua及びC.marinaは少なく、原因種としては、主にGymnodiniumと考えられているが、現在無菌化と培養を実施中である。予備的な実験(未無菌化)では、海水栄養塩培地(ESM)で本種は培養維持が可能であり、10l規模の通気培養により30,000cells/ml程度の培養が可能なことが分かった。
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