Research Abstract |
本研究では年間5回の研究会を開催し,次の結論を得た. 1.超摩擦材料のコンセプト.超摩擦材料とは摩擦が望ましい状態にあるようにコントロールされた表面であり,また摩擦過程を経ることによって超摩擦材料がその特性を失わないように,むしろ摩擦過程を経ることによってより望ましい摩擦特性が生成される方向を重視する.具体的に言えば,色々な極限環境の下で一定の摩擦係数を維持できる摩擦表面,摩擦係数をより望ましい値に変化させられる摩擦表面,1.0の高い摩擦係数あるいは0.01以下の低い摩擦係数を維持できる摩擦表面など,このような高度に制御された摩擦材料を超摩擦材料とする. 2.超摩擦材料研究の必要性.最近は機械要素の巨大化,あるいは微小化,精密化,機械システムの集積化が進む一方で,これらの超高温,極低温,真空,超高圧,超高応力,放射線被爆,腐食性雰囲気など極限環境での使用は増え続けており,これまでの科学技術の歴史の上から見ても例がないほど摩擦コントロールの必要性は高まっている. 3.重点領域への提案.材料設計技術,表面改質技術,精密加工技術,材料評価技術は近年目覚ましい発展を遂げており,これらの高度技術を用いることによって今では様々の機能化・知能化された材料が考えられ,あるいは世に送り出されている.摩擦がコントロールされた表面も材料の機能化・知能化の一つであることを考えれば,その実現に向かって努力することは科学技術に携わる者としてわれわれの使命であり,むしろこの時期を逸してはならないと思われる.したがって,超摩擦材料を重点領域として提案し,最先端の技術を結集することとした. 4.研究の目的.本研究は試行錯誤的な開発方法をとらず,目的を三つ定めて,システマティックに研究を行う.目的の一は摩擦のメカニズムの解明であり,主として理論的研究による.その二は,目的一の結果を受けて,具体的な試作研究を通して超摩擦材料の実現を図る.ただし,あらかじめ目的にかなうような超表面材料を準備するプレプロセス創成および摩擦過程を経て超摩擦材料の実現を目指すインプロセス創成の二つに分ける.続いて,目的のその三として,超摩擦材料を開発するシンセシスの方法論を構築することを挙げる. 4.研究の進め方.表面材料の属性をstructure,speciesおよびgeometryの三つに分類し,これらの属性を明らかにすることを念頭に置きつつ研究を遂行する.すなわち,これら三つの属性を横糸と考え,また上で述べた三つの目的を縦糸として,個々の研究テーマは密な連携の下に研究を遂行する. 5.研究組織.日本の大学で,色々な角度からトライボロジーを専門的に研究している研究者を中心に,約30人程度の研究組織を作り,有機的,効率的に研究を行う.また,15程度の計画研究を中心として,3年間を目途とする.
|