Research Abstract |
流体潤滑条件下では、その系の潤滑特性は、潤滑油の剪断場の挙動に大きく影響される。近年、潤滑油の分子構造が、潤滑に大きな影響を与えることがわかってきた。このため潤滑油分子の剪断場での挙動を解明することが必須である。しかし潤滑条件下の潤滑油の動きを観察するには,その場観察を優れた時間分解能を持つ手法で行う必要があるため,研究は行われていなかった。本研究では,マイクロ秒以下のオーダーで潤滑油の剪断下での挙動を測定する時間分解赤外分光システムを開発し,測定を行った。 赤外高輝度光源,赤外ミラー,赤外用グレーティング,高感度MCT検出器を採用することにより明るい光学系を実現し,さらにロ-ノイズ増幅器と高性能デジタルオシロスコープを組み合わせ,感度よく信号を収集積算することにより,マイクロ秒以下の時間分解能を持ち,吸光度10^<-6>という小さい信号も測定できる装置を開発ことができた。別途潤滑油に剪断をかけながら赤外スペクトルを測定できるセルを作成し,このセルと開発した時間分解赤外分光システムを用いて,シアノビフェニル系液晶(5CB)の剪断下での挙動を測定した。偏光子を用いて実験することで剪断に伴う5CB分子の剪断配向について検討した。 5CB分子は,CN結合を持っており,この振動方向は分子の主軸の方向と一致する。このため,このCN振動の吸光度を測定することにより,分子配向に関する知見を得られる。剪断方向に平行および直角の偏光をかけて,実験を行ったところ,剪断速度の上昇とともに平行偏光のCNの吸光度の増加が見られ,5CB分子が,剪断により剪断方向に平行に連続的に分子配向していく様子がはじめて明らかとなった。 今後,液晶以外の通常の潤滑油の剪断下での配向挙動を調べる実験を行う予定である。分子構造と剪断下での分子挙動の関係を明らかにし,新たな潤滑油の設計も行いたいと思う。
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