Research Abstract |
本研究では,河口内水位の変動特性から河口最狭部断面特性を推定する手法の精度を検討するとともに,同手法の適用性を判定するための条件について検討を行った.まず,現地データを入手するために,北上川河口に位置する宮城県・長面浦において調査を行った.また,仙台市・七北田川河口においても現地調査を実施した.同河川については1988年から昨年度までの資料も使用することができた.さらに,福島県いわき市・鮫川における資料を入手し,以上の3地点に対して断面推定法を適用した.実際に同手法を用いる際の問題点は以下のようである.すなわち,(1)断面形の仮定の仕方,(2)水路長の取り方,(3)最狭部での断面積,径深を求める際に使う水位の選びかた,(4)wave set-up高さの与え方である.これら各項目についての検討の結果,(1)推定される面積は断面形状の選び方によらず,差はほとんどない,(2)水路長には実際の長さを取ればよいこと,(3)水路中間点水位により断面積等を求めればよいことなどが分かった.(4)の砕波による水位上昇量については,現時点ではもっとも不明な点が多いが,これを未知数として経験的に定めることも可能であることが示された.次に,河口内での水位低減率a_Bを用いることにより,この手法の適用の可否を判定するための条件を得ることができた.実測水位によれば,少なくともa_B<0.8であれば同手法を適用できる.一方,線形された線形理論に基づく評価ではa_B<0.95なる条件が得られる.後者の条件は実測水位が無い場合でも使用できる. 河口横断測量に比べて,河口内水位観測は容易にかつ安価に行うことができる.本研究で開発する手法によれば,水位データから最狭断面の情報を推定することが出来る.これにより,従来,データの収集がきわめて手薄であった中小河川の河口断面特性に関して,きわめて有益な情報を提供できることになる。
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