Research Abstract |
本研究の調査対象となったワークプレイスは,金沢市にある冷凍海産物を扱う冷凍冷蔵庫,及び,諏訪市にある精密機械部品工場であった。 冷凍冷蔵庫における調査では,倉庫業を物流を組織化する活動として捉え,その具体的表現である倉庫内の荷の"配置",及び,"スペースづくり"に関わる認知的活動に一つの焦点を当てて研究をした.海産物市場と密接に結びついた冷蔵庫業においては,持ち込まれた荷の倉庫内での配置と,次に来る荷のためのスペース作りは極めて重要な作業である.どの荷も倉庫での保管期間は一定ではなく,市場の動き,荷主のオーダーに合わせて頻繁に出し要れされるため,倉庫業者の側は,この荷はいつ頃,どの位の数量の出庫オーダーがあるだろうかと,荷の動きを予測して,スムースに出し入れ出来るように配置する必要がある.実際,倉庫の作業員たちは,様々なリソースを用いて荷の特徴を見,かつ,その動きを適切に読んでいる.例えば,ヤリイカ1000箱の入庫オーダーを見た場合,彼らは,その品名との数量の多さから,それは加工場に出庫される荷であろうと予想する.そして,工場に運ばれるものは,通常,日中に出庫されるから,通路の奥においてもよいだろうと判断する.このように,冷凍海産物を動きの予測を含めてどのように"見る"かということは,流通という活動に埋め込まれた様々なリソースの組織化によってなされている.また,それらのリソースは,流通活動の枠組みの中で,有効なリソースとしてのまとまりを持つとともに,相互にリソースとしての意味を規定しあっていることが,この調査から,明らかになった. 精密機械部品工場における調査では,"技術"の中味を,"読む"という活動の中に探った.その結果,図面を詠むということは,一連の行為のコースに埋め込まれており,どういうときに,どのようなリソースとして画面を用いることが出来るかということ,或いは,いつ,どこを,どんなタイミングで読むことができるということの中に技術があるのではないかということが明らかになった.
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