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¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 1995: ¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
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Research Abstract |
本研究ではシアノビフェニール系の液晶ベンゼン溶液について時間領域分光測定(TDS)および示差走査型熱量測定(DSC)をおこない,その分子機構を検証していくことが目的である. シアノビフェニール系液晶の中でもよく調べている8CBは,ネマティック相とスメクティックA相の2種類の液晶相を示す.本研究ではまずこのベンゼン濃厚溶液について,濃度を変えてDSC,TDS両測定をおこなった.DSC測定から各相転移温度の濃度依存性を測定した.その結果重量濃度97%付近で液晶相がひとつになり,93%付近では等方相のまま液晶相をとれなくなることが判った.分子の形状や体積を考えると,これらの濃度はそれぞれ短軸,長軸まわりの運動についての分子間相互作用の影響を表していると考えられる.さらにTDS測定による誘電緩和強度の測定から,0-80%までは濃度に比例していた緩和強度が,80%以上で増加量が鈍り,93%で激減することが判った.これは80%を越えた濃度領域での反平行ダイマーの形成を思わせるが,ペランの式などによる緩和パラメータの動力学的解析などによっても,これを断言するだけの知見は未だになく,今後の重要な課題である.束縛されている分子の動力学的性質を反映する緩和パラメータの解析は最近高分子-水系で精力的におこなわれており,液晶系でも使用できる一般性を示している.液晶の様にほとんどデバイ型の緩和過程の重ね合わせで説明できてしまう場合いは,緩和時間分布のユニヴァーサルな取り扱いよりも,高分子-水系で示される自由水の緩和過程と類似である.これは水のマイクロクラスター構造の動的挙動で解釈されるべき現象と考えられており,液晶分子が液晶相や反平行ダイマーを形成していく際の秩序形成過程における緩和パラメータの挙動との比較が興味深い.
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