研究課題である連続時間のL_1制御問題について、研究代表者が従来から提案していた上界列と下界列を用いて最適解を構成する補間点拡大法とよばれる手法について、次のことが新しく分かった。まず、拡大するブロックの構成方法を従来の結果よりも制約を緩くすることができた。つまりスカラーの伝達関数ではなく、多入力多出力の伝達関数として不安定零点を増加するように選べば、下界列と上界列がともに汎弱位相の意味で最適解に収束することを示すことができた。次に、H_∞の場合、下界列のノルムはHankel-Toeplitz作用素のノルムを漸近的に計算していることがわかった。これは、L_1制御問題に対しては直接の意味をもたないが、補間点を拡大することと作用素のノルムを計算することの密接な関係を示している。さらに、L_1制御に補間点拡大法を適用したときの上界列の収束性に関して、従来の条件よりも緩い条件のもとで汎弱位相の収束よりも強い結果を与えることができた。この結果により拡大の次数を途中で打ち切ったときに上界列が最適ノルムを任意の精度で近似できると言う意味で準最適になることが示され、この設計法の根拠を明らかにした。最後に、計算機に実装する場合に必要となる補間条件の線形拘束式への変換方法を与えた。補間条件はそのままの形で、行列のJordan形を求める計算が必要となり数値的に信頼性が低い。離散時間l_1制御で用いられていたnull chainという概念を用いて数値的に信頼できる計算を得る方法を連続時間の場合にも適用できることを明らかにした。
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