Research Abstract |
(目的)冠危険因子が血小板凝集時のnegative feedback機構である血小板由来一酸化窒素(NO)放出能に及ぼす影響を検討した。(方法・対象)冠危険因子は喫煙,高血圧,高コレステロール血症とし、冠危険因子を有さない健常例9例と冠危険因子を1つ以上有する21例の計30例とした。対象例より洗浄血小板浮遊液を作成し、一酸化窒素選択性電極を用いてコラーゲン3μg/ml添加時の電流値を測定した。なお、得られた電流値の最大値をNO放出の指標とした。また、血小板内cGMP量と血小板凝集率についても併せて検討を行った。(結果) 1)最大電流値は、喫煙者において非喫煙者に比し有意に低値であった。(喫煙者6. 5±1. 8vs.非喫煙者14. 4±5. 1pA; p<0. 01) 2)血小板凝集前後の血小板内cGMP較差は、喫煙者において非喫煙者に比し有意に低値であった。(喫煙者1. 2±0. 6vs.非喫煙者3. 0±1. 1pmol/10^9 platelets; p<0. 01) 3)コラーゲン3μg/ml添加時の血小板凝集率は、喫煙者および非喫煙者においてNOの基質であるL-arginine (10, 100, 300μM)の存在下において有意に抑制された。さらにL-arginine (100, 300μM)存在下では、血小板凝集率は喫煙者において非喫煙者に比し有意に高値であった。4)高血圧または高コレステロール血症を有する例において、最大電流値は両者を有さない例に比し有意に低値であった。5)最大電流値は、冠危険因子数と有意な負の相関を示した。(r=0. 73, p<0. 01) (総括) 1)冠危険因子(喫煙,高血圧,高コレステロール血症)は、血小板由来一酸化窒素放出能を障害した。2)この血小板由来一酸化窒素放出能の障害は、血栓形成を促進し冠危険因子による虚血性心疾患発症の一因である可能性が示唆された。
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