Research Abstract |
[目的]本研究は強迫神経症の臨床例を研究することにより,異文化間精神医学の統計的研究に欠けている視点を提供することを目的とする. [対象]大学病院外来などを受診した英語圏在日外国人の5強迫神経症症例を対象にする. [手段]秋山,五味渕のプロセスモデルを援用し,患者の生活史,病前性格,発病状況,治療反応を調査し,それらと日本への渡航動機,文化摩擦との関連を考察,分析する. [結果]我々が作成したプロセスモデルの有効性が,強迫神経症においても検証された. (1)症例は,男性が4人,女性が1人である. (2)それぞれ1人の男性(49才),女性(35才)が既婚であり,残りの3人は20才代である. (3)家族に精神科歴のあるものが多い(3例).残りの2例のうちの1例は両親が離婚しており,渡日以前から抑うつ状態にあった. (4)家族・生活史・性格に劣等感のあるものが多く,その代償を求めて渡日したものが多い(4例).残りの1例は女性であり,夫に従った受動的な渡日であった: (5)職業生活の問題で発症したものが2人,女性関係で発症したものが2人で,すべて男性である.このうち日本に対する幻滅,文化摩擦を示したものは1人のみである.女性の発症は,夫の多忙な職業生活が誘因である. (6)薬物,精神療法は有効であるが,男性症例には将来に対する自己決定の問題が深く絡んでいることに精神療法上の注意が必要である。
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