Research Abstract |
空間評価における個人差に関する研究の一環として,身体的状況や生活経験に基づく個人差が大きい高齢者に着目し,面接法による写真エレメントの分類による心理実験を試み,同時に生活実態把握のための調査を実施した。被験者は60歳〜70歳の男性9名,女性12名計21名である。心理実験では,身体的状況による影響を明確に捉えることを意図し,公共建築物へのアクセスのしやすさを視点とする写真エレメント16枚を用いた。 分析の結果得られた知見は,以下に要約される。 1.総合評価の評価傾向は,情緒性重視群と機能性重視群に二分された。 2.典型評価パターンとして,以下の5つが抽出された。(以下,評価軸としてのディメンジョンをDで表示) (1)パターンI(D1=明るさ,寄与率91%) (2)パターンII(D1=親近感,寄与率43%,D2=空間の広さ,寄与率20%,D3=個人的関心,寄与率10%) (3)パターンIII(D1=明るさ,寄与率46%,D2=段数,寄与率22%,D3=建物の用途,寄与率13%) (4)パターンIV(D1+D2=段数,寄与率75%,D3=好感度,寄与率8%) (5)パターンV(D1+D2=段数,寄与率60%,D3=建物の外観,寄与率17%) 3.5つのパターンと外出頻度にみる活動度および体力・健康への自信の程度との関連を検討した結果,高齢化に伴う体力的な衰えが顕著でない場合には,本来の情緒性重視の評価傾向が保たれていた。外出頻度が低下すると,その影響は,ディメンジョンウェイトの低下として表れはじめ,さらに,体力や健康への自信が失われていくと,評価軸としてのディメンジョンの形成に,直接的に影響が及ぶ傾向がみられた。
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