Research Abstract |
山腹工事施工後の経過年数が6年から60年までの治山施工地12箇所を対象にして,施工地土壌の物理的性質と化学的性質を調査し,施工地周辺の崩れていない林地表層土壌の諸性質とを対比し,施工後の経過年数との関連で土壌回復状況を検討した。調査方法は施工地内および隣接林地で土壌の物理的性質を調べるために表層土壌から100cc採土円筒により不攪乱試料を採取し,粒径組成および炭素,窒素含有量測定陽の攪乱試料も採取した。 治山施工地の土壌孔隙率は隣接林地に比較して値は小さいものの経過年数とともに増加傾向がみられ,比較的早い時期に隣接林地の状態に近づくことが認められた。孔隙に中の非毛管孔隙率は,経過年数とともにやや増加傾向は見受けられたが,毛管孔隙率は隣接林地に比較して小さく,経過年数との関連で明確な傾向は認められなかった。このことから,土壌化初期の段階では、比較的大きい孔隙が増加し,保水力の改善にはさらに年数が必要であろうと推察された。表層土壌に含まれるシルト以下の細粒分の含有率は経過年数とともに増加傾向は認められるものの,施工後30年程度では隣接林地に比較して値は小さく,土壌の細粒化には長期間が必要であろうと考えられた。表層土壌中の炭素,窒素含有量と施工後の経過年数の関係および隣接林地の状況と比較したところ,両含有量とも施工後の経過年数とともに増加しており,植生被覆による有機物の供給や分解によって土壌の化学的性質の改善が徐々に進行していることを示していた。しかし,施工地の炭素含有量は多くても5%程度であり,隣接林地土壌の含有量に比較すれば小さな値であった。 このように土壌生成過程,土壌化の進行は長期間を要し,また地形や気象条件に影響を受けるので,その面からも検討を始めている。
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