Research Abstract |
Lycopodium lucidulumのメタノール抽出物について,クロロホルムと10%の酒石酸水素カリウムとを用いる向流分配法を用いて強塩基と弱塩基に分離した.次いで弱塩基性成分についてアルミナのカラムクロマトにより順次分離しLucidineA, lucidineB, lycolucine, dihydrolycolucine, oxolucidineA, oxolucidineBをそれぞれ単離した.これらの化合物の名称の同定は文献値と比較することにより行った.しかしながらlucidine類およびoxolucidine類についてはその構造は一部が推定されているに過ぎないため,これらの還元により,N-アセトアミド部分をN-エチル基に変換した.これによりアミドに由来する回転変異体が消失し,NMR上でも解析が格段に容易になった.600MHzNMRの2次元法を駆使することにより,また溶媒をCDCl_3からC_6D_6に変えることにより,シグナルの分離がよくなり一層解析が容易になった.この結果,これまで不明であったlucidineBの13位の水素の立体化学が明らかになった.ここで単離した一群のアルカロイドはC_<30>N_3の分子式を有し,これまでこのような複雑な化合物はNMRによって解析された例はなく,純粋な化合物さえ単離できればスペクトル的に解析することも可能であることを示した.lucidineAも同様に還元したが,得られた量が少なくスペクトルは完全には解析できなかった.同様にoxolucidineA,Bについても還元し各種2次元NMRによって炭素については完全に,水素については一部を除いて帰属が完了した. 今後は材料をもう少し大量に輸入することと,高速液体クロマトグラフィー等を用いる迅速かつ高分離法を用いることが望まれる.
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