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¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 1995: ¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
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Research Abstract |
研究代表者らが新しく見出した細胞内情報伝達物質cyclic ADP-ribose (cADPR)は、リンパ球の表面抗原であるCD38により合成・分解される。本研究の目的は、cADPR合成・分解酵素(CD38)の活性発現に必須な一次構造を明らかにすることである。平成7年度の研究計画は、計画どおりに進行し、以下の様に期待された成果が得られた。 1.ヒト、ラット、マウスのCD38のアミノ配列および研究代表者らが決定したアメフラシのcADPR合成酵素のアミノ酸配列(Gene158, 213-218, 1995)を比較した結果、アメフラシ酵素に存在する10個のシステイン(Cys)がCD38でも保存されていた。この10個のCys以外にCD38間ではさらに2個のCysが保存されており、アメフラシ酵素ではこれら2個のCysに対応する配列はリジン(Lys)とグルタミン酸(Glu)であることが明らかとなった。 2.研究代表者らはすでにヒトインスリノーマ由来のRNAを鋳型にしたPCR法によりヒトCD38 cDNAを、アメフラシ卵精巣のcDNAライブラリーよりcADPR合成酵素のcDNAを単離しているので、CD38およびアメフラシ酵素のcDNAの1.で同定した領域に、site-directed mutagenesisの手法を用いて変異を導入した。 3.変異を導入したCD38およびアメフラシ酵素のcDNAをpSV2ベクターに組み込んだ後COS-7細胞に導入して、変異を持った酵素をCOS-7細胞に発現させた。 4.ウェスタンブロット法により、変異cDNAを導入したCOS-7細胞中に酵素タンパクが発現していることを確認した。 5.^<32>Pで標識したNADおよびcADPRを基質に、AG-MP1カラムを用いたHPLC法でcADPRの減少とADP-riboseの増大を指標にして、変異cDNAを導入したCOS-7細胞のホモジェネート中の酵素活性を測定した。その結果、CD38でのみ保存されている2個のCysをそれぞれLys, Gluに変異させたCD38はcADPR分解活性を失い、合成活性のみを示した。またアメフラシ酵素のLys, GluをどちらもCysに変異させると、アメフラシ酵素はcADPR合成活性に加えて分解活性も有するようになった。(Diabetes 1994, 244-246, 1995) 6.研究代表者らはヒトCD38遺伝子を単離しその構造及び染色体座位を決定した(Cytogenetics and Cell Genetics, 69, 38-39, 1995)が、その結果ヒトCD38遺伝子からは選択的スプライシングによって上記の2個のCysを欠く変異体が生じることが明らかになった。この変異体のcDNAをCOS-7細胞に発現させたところ、cADPR合成・分解活性は認められなかった。 以上の結果から、CD38の2個のCysがcADPR合成・分解活性に必須であることが明らかになった。
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