Research Abstract |
神経細胞の樹状突起内部は微小管の束とその間をすり抜けるように伸びる管状の滑面小胞体のネットワークにより満たされる。3〜5分の短い時間の低酸素状態にラットを置くと、小脳プルキンエ細胞の樹状突起内部にネットワークを形成している管状の滑面小胞体が、扁平で中央部分に多くの窓を持つ有窓小胞体を経て、扁平な小胞体が密に積み重なって出来た層板小体に変化する(J. Comp. Neur. 1996)。この短時間の低酸素状態を経験したラットに人工呼吸を施すと、30秒で層板小体の層板の乖離が始まり、1分では層板小体は完全に消失し遊離した板状の小胞体に占められる。そして3分で完全に管状の滑面小胞体のネットワークを回復する。以上の事実を連続切片による立体電顕観察と形態計測により明らかした。また短時間の低酸素状態によるこの層板小体形成を代謝調節型グルタミン酸受容体の拮抗薬(L-AP3)の事前投与により阻止できることを見出した。ここでグルタミン酸受容体と層板小体形成の関連を知るために、L-グルタミン酸、NMDA,AMPA,カイニン酸、t-ACPDを脳室内に投与して電顕観察と形態計測を行った。その結果、グルタミン酸、及びを代謝調節型グルタミン酸受容体の活性化では低酸素状態と同じ層板小体形成が起こり、AMPA/kinate型受容体の活性化では細胞質の電子密度が高まる変性所見が出現することが分かった。
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