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¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 1995: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Research Abstract |
造血機構は近年研究が進み、造血幹細胞についても細胞側受容体c-kitとそのリガンドstem cell factorの関与が明確になってきた。しかし、他の因子の研究は不十分であり、造血幹細胞増殖機構の全体像解明は今後の課題である。 常染色体劣性変異体wastedマウスは、生後3週令に達した後、神経系や免疫系,造血系の異常,体重増加停止など,多様な臨床症状をわずか1週間で急激に呈し、死亡する(Shultz et al., 1982)。申請者は、上記の臨床症状が、生後22日令以降の日令に依存して、組織特異的に生ずることを見いだした(Tezuka et al., 1986; Inoue et al., 1986)。特に骨髄細胞の放射線感受性の変化は、赤血球産生系に特異的であり、前駆細胞CFU-Eに発現していた(Tezuka, 1990)。これらの変化の一因として,造血幹細胞の異常が予測された。 申請者は,今年度の研究において、研究実施計画に沿って実験を進め,脾コロニー形成法を用いて,造血系器官である骨髄と脾臓における2種類の造血幹細胞day8-CFU-S,day12-CFU-Sの動態を解析した。動物は,実験群を変異体wastedマウス,対照群を同腹正常個体とし,毛生の遺伝子マーカーにより両者を区別した。動物の日令は,生後12日令より27日令まで3日間隔とした。その結果,骨髄・脾臓の両造血器官においてともに,上記の両幹細胞の数的な異常が,上記の臨床症状が発現する22日令よりはるか前の12日令より発現しており,しかもこの異常が27日令まで持続していることがわかった。ここに幹細胞の数的な異常とは,対照群動物における円滑な幹細胞数の増加に比較して,実験群では変動を3日毎に繰り返していたということであった。 このことは、wasted遺伝子の作用点が,少なくとも造血幹細胞の増殖に関与する部分を含むことを強く示唆するものであり,当初の研究目的の要点は達成された。今後は,造血前駆細胞の動態解析を含め,次年度以降に予定している造血幹細胞の数的異常の実態解明と合わせて,変異体wastedマウスの造血系細胞の変化の全体像を把握したい。
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