Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1995: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
本研究の目的は,意味ネットワークの概念間を結ぶ関係リンクが,従来の仮定よりも機能的で独立した活性度を持つという仮説を,実験とシミュレーションを利用した認知科学的アプローチによって検証することにあった. 1.心理実験 英語を材料とした道具推論の研究では,動詞を指示するだけで道具名詞にプライミング効果が得られるため,関係リンクは概念に従属したものと見なされてきた.しかし,英語の場合は語順自体が関係を規定するので関係リンクが表面上従属的に見えるが,実際はその機能を持つ独立した関係リンクが形成されている可能性は否めない.そこで本実験では,この機能を助詞が司る日本語を材料とし,助詞の有無を独立変数とした道具推論のプライミング実験を行った.用いられたプライムとなる動詞とターゲットとなる道具名詞の関連性は,予備実験に基づいて,3水準設定された.その結果,助詞あり条件だけでプライミング効果が得られ,そのピライミング効果は関連性の高い道具名詞ほど大きかった.このことは,道具推論は,特定の機能を持つ関係リンクがあらかじめ活性化されており,それに適切な概念が結びつくことで可能となることを示しており,関係リンクの機能性・独立性を仮定した本仮説は支持的証拠を得た. 2.シミュレーション 1.の実験結果をもとに,自然言語処理モデルCORESの概念間関係リンクを,格関係機能を属性として持つ独立した存在(ある意味ではノード)として設定した.その上で,動詞,助詞,と提示されていくことで道具名詞を予測するシミュレーションを行い,効率的に道具名詞だけが予測できること,しかも関連性が高く,プライミング効果が高かった道具名詞ほど予測指数(活性度に基づいて算出される指数で,これが高いものから順に予測結果とする)が高いことが明らかとなり,モデルの妥当性が示され,本仮説は検証された.
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