Research Abstract |
ファジィ・ニュールラルネットの一種であるファジィ認知地図が,人間の概念処理のプロセス・モデルとして,どれだけ有効であるかを,調査および実験を通じて検証した.今年度の研究では主として,ファジィ認知地図で表現される属性間関係と,性格特性語カテゴリーの階層構造(並行して検証を進めつつある)との関係,および概念学習のプロセスとの関係を探求した. 日本心理学会第59回大会で発表した研究では,心理学研究に掲載された,山口・河原・久野(1995)で作成した性格特性語の3つ組(上位語-中位語-下位語)に該当する属性をネットワークのノードとして用いることで,性格特性語カテゴリーにおける階層構造と,ファジィ認知地図によって捉え得る属性間関係構造との関係を検討した.まず,質問紙による評定データをファジィ認知地図に変換し,そのファジィ関係行列をノード間の結合荷重として持つニューラルネットワーク・モデルによるコンピュータ・シミュレーションを行った.その結果,上位語から活性化伝播を行った場合には下位語が,中位語から活性化伝播を行った場合には下位語が,下位語から活性化伝播を行った場合には中位語が強く活性化されるといったパターンが得られた.この結果は,中位語がいわゆるベーシック・レベルの概念に相当し,この水準における対象の特定が最も弁別力が高いことを示唆しているものと考えられる. また,日本教育心理学会第37回総会で発表した研究では,学習刺激特性として上位語-中位語-下位語を用いた概念学習実験を行い,階層構造における水準と概念獲得課題の難易度の難易度の間に関係があることを明らかにした. なお,ファジィ認知地図モデルと従来の多変量解析の技法とを対照する理論的研究,および概念的推論課題実験における被験者の反応潜時と,ネックワークモデルの動作における競合・協調の安定化までの時間を対照する研究が現在進行中である.
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