Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 1995: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
本研究の目的は,精神遅滞児の他者との相互交渉の様子を観察・分析し,相互交渉を促しあるいは抑制する要因を検討することであった.対象児は養護学校に在籍する重度の精神遅滞のある6年制の女児であった.他者との相互交渉を促す方法として,先行研究よりからだを通じたやりとりが考えられた.そこでからだを通じて一緒に動かす(臥位で手を上げる・立位で膝を屈げ伸ばしする)ことを独立変数とした.その働きかけに対する変化の尺度としての従属変数は,以下の三つであった.(1)自由条件(対象児に対する制約がまったくない状態)での対象児の他者やものへの働きかけの変化,(2)陪席条件(対象児の隣に他者が座って様子をうかがっているところ)で,他者に対して対象児がどのような自発的なかかわりを持とうとするか,(3)共同注意条件(離れたところにある対象に,他者が指さしするところ)での対象に注意を向けるかどうか.その結果,からだを通じたやりとりでは,課題に応じて一緒に動かす感じが明確になり,お互いに注意をからだに向け合う頻度が増えた.このからだを通じたやりとりの変化の結果,(1)自由条件では,自分から他者や物にかかわる回数が増えた,(3)共同注意条件では,1セッションの中の2回ほどであるが対象に注意を向けてそれを取りに行くことが見られた.これらの結果からからだを通じたやりとりは,精神遅滞児の他者との相互交渉を促進する方法であると考えられた.しかし,(2)陪席条件では,当初,他者へのかかわる回数が増えていたが,途中から他者への働きかけが少なくなっていった.これは他者が積極的に自分にかかわってくれないことを気づいたためであろう.尚,それぞれの条件で対象児の視線の方向をビデオから分析することも試みたが評定者によるばらつきが多く,今後これらの非言語的なやりとりをデータベースとして貯蔵・分析することが必要である.
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