Research Abstract |
この助成によって得られた研究結果は,証券経済学会全国大会平成7年度秋季大会(大阪商科大学に開催)において報告された。その要旨は『証券経済学会年報』第31号(平成8年5月刊行)に掲載されることになっている。その中で,(1)改革過程における中国国有企業の所有構造と支配構造の変化,(2)現在中国の株式制企業における所有構造と支配支配構造の特殊性,(3)中国における株式制企業の所有構造と支配構造に関する改革案,という3つの問題が論じられている。株式会社制度が導入と普及される背景が説明され,現段階の中国の株式制企業の所有構造が国全体・上海市・個別企業の3つのレベルで明らかにされ,支配構造における「新三会」と「老三会」と矛盾を指摘し,政府主管部門による企業への不当介入を防ぐための具体的方策を提案した。 また,中国国有企業の改革をエージェンシー理論の視点からの研究も試みた。その成果は『経済と経営』(札幌大学経済学会)第26巻第3号(1995年12月)に発表されている。その中で,エージェンシー理論の基本概念を紹介した上,国有企業と政府間のエージェンシー問題が分析され,改革過程の過渡的形態として,中国企業に普及された請負制における経営者と政府主管部門の請負契約を分析した。その限界を指摘して,株式会社への移行の必要性を訴えた。 今後の研究課題として,上場企業を中心に,支配類型と企業のパフォーマンスとの関連性を実証的に解明したい。また,有効な支配構造を確立するために,銀行の役割について,野本のメインバンク制度を参考しながら,研究していくつもりである。
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