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¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 1995: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
任意のリーマン面はリーマン等質空間の不連続群で割ったものとして実現されるというのがケ-ベ,クライン,ポアンカレによる古典的なリーマン面の一意化定理である。一般のリーマン対称空間に一様格子が存在するという1960年代初頭のBorel-Harish-Chandra, Mostow-玉河による定理はリーマン面の一意化定理の一側面の,重要な高次元化である。一方,非リーマン対称空間においては,必ずしも一様格子が存在しないことが,Calabi-Markus, Wolfなどにより定曲率のローレンツ空間(相対性理論的空間)などで認識されていた。本年度は,リーマン対称空間を非常に特別な場合として含む広いクラスの等質多様体に対して一般な状況で,筆者が8年前より提唱している「非リーマン対称空間に一様格子が存在するか」という問題をさらに系統的に研究を行った。研究実績の概要は以下の通り: 1)簡約型等質多様体G/HにGの離散部分群が左から自然に作用しているときにその作用が固有不連続になるための必要十分条件を決定した。これは,1989年に当研究者がCalabi-Markus現象の判定条件を決定した際に用いた主要な補題の一般化でもある。 2)タイヒミラー理論は、リーマン面の上の複素構造が豊富にあることを出発点としている。これは2次元のリーマン対称空間SL (2, R)/SO (2)に作用する一様格子が局所剛性的でないと言い換えられる。しかし,高次元のリーマン対称空間の既約一様格子は局所剛性的であることが知られている(Weil)。すなわち,高次元の「タイヒミラー理論」はこの方向には望めないわけである。当該研究において,種々の非リーマン対称空間に局所剛性的が成り立たない一様格子が存在することが証明された。これは,その上の幾何構造の変形理論という新しい研究方向も広げていると考えられる。 3) European School on Group Theoryで,ヨーロッパ圏の大学院生,若手研究者を対象に当該分野における最近の発展について連続講義をおこなった。その講義録(Academic Pressから出版予定)において,一様格子を持つあるいは持たない等質多様体について具体的な例を多く調べた。最近この分野にエルゴード理論,アノソフ流,調和写像,離散群,シンプレクティック幾何などの専門家が参加していることもあり,この講義録は互いの理解の促進にも資すると考えられる。
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