Research Abstract |
無限次元空間上の測度の群作用による変換として最も扱い易いのは,数列空間上の無限直積測度の平行移動である。この変換の連続性は,変換が絶対連続性を保存するという性質に基づいて証明されてきた。本研究では,無限直積測度の変換としてランダムな平行移動を施したときに,絶対連続性が保存されるための必要十分条件を与えた。すなわち,独立同分布な確率変数列X={X_k}_kに,これと独立な独立確率変数列Y={Y_k}_kによるランダムな平行移動を施して得られる確率変数列X+Y={X_k+Y_k}_kを考え,数列空間上にXが導く分布と,X+Yが導く分布が互いに絶対連続になるための必要十分条件を与えた。 これまで,(1)必要十分条件を(2)Yの分布だけで述べた結果は,Yの分布が特別な場合を除いて,知られていなかったが,本研究では,Yが,独立同分布な確率変数列Θ={Θ_k}_kに係数a={a_k}_kを掛けて得られる場合,すなわち,Y={a_kΘ_k}_kの場合に,絶対連続性が保存されるための必要十分条件がa∈l_2,または,a∈l_4で与えられることを証明した。 この結果は,Rozanov(1962),Shepp(1965),Okazaki-Sato(1994),Sato-Watari(1993)らの結果を部分的に拡張しているばかりでなく,a∈l_2,a∈l_4という条件の相違が,Θ_1の平均値が0であるかどうかに起因することを明らかにしている。また,Θ_1の分布が,指数が2より小さい対称安定分布の場合は,Θ_1の2次モーメントが存在しないために,ここで得た条件a∈l_4で絶対連続性を特徴づけることは不可能であることが分かった。
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