Research Abstract |
線形計画問題その他に対する有力な計算手法として認識されている内点法は反復法であり,各反復において探索方向を与えるニュートン方程式を如何に効果的に解くかがその実装の鍵となる.大規模な問題に対しては,ニュートン方程式を反復の初期段階から厳密に解いていくよりもCG法などの反復法を用いて近似的に解いていく方が実用的であると考えられ,ここ数年このような観点から大規模な数理計画問題に対する内点法の近似的な実装のための理論に関する研究を行ってきた.本研究においては,特に制御系を対象とした内点法の実装に関して,以下の点について考察した.(1)関数空間上の非線形計画問題に対する内点法と最適制御問題への応用……一般の連続時間最適制御問題に適用することを目的として,関数空間上の非線形計画問題を解くための内点法アルゴリズムについて考察した.まず基本となる関数空間上の2次計画問題に対するアルゴリズムを開発し,状態不等式制約条件を持つ最適制御問題に対する数値実験を行った.上述の意味での内点法の近似的な実装にともない有効な前処理が不可欠であるが,最適制御問題に特有の疎構造を利用した良いプリコンディショナ-の構成が期待できる.より一般の非線形計画問題に対するアルゴリズムについては現在も継続して考察を行っている.(2)内点法を用いた線形制御系の設計……線形制御系に要求される多様な設計仕様のほとんどは凸最適化問題として定式化できるが,時間領域における設計では多くの場合これは線形行列方程式に帰着する.本研究では,外乱など不確実要素の存在のもとでの階層的制御系設計法として,特にH_∞ノルムに関する満足条件のもとでLQ最適制御あるいはより一般のmin-max制御を実現する一種の状態フィードバック系を,内点法を用いて構成するアルゴリズムを開発した.これについてはさらに十分な数値実験を行うつもりである.
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