Research Abstract |
ドイツ・マインツ大学850MeVマイクロトロンからの高エネルギー連続電子線を使って、世界で初めて3重同時計数電子散乱実験、^3He(e,e′pπ^+)実験を行い、^3He核基底状態にあると理論的に予想されているデルタ粒子成分の検索を行った。 実験では30マイクロアンペア-という大電流の電子ビームを20Kに冷却された高圧^3Heガス標的に照射し、散乱電子を超前方(20度)で検出した。^3He核へのエネルギー及び運動量移行は、それぞれ400、450MeV/cであった。そして実験室系で180度の開き角をもった陽子及びパイ中間子対を同時計数した。これは実験室系で静止したデルタ粒子の崩壊をとらえるためである。すなわち我々の実験配置は、初期状態で電子からの運動量移行450MeV/cに対し反対向きに同じ運動量を持っているデルタ粒子が、仮想光子を吸収し、終状態で静止する運動学に対応している。この場合、実験配置がとりやすいだけでなく、反応断面積の縦・横干渉項も比較的容易に測定できる特徴があった。 この実験に先立って、2重計数実験^3He(e,e′π^+)、(e,e′π)、を行い、我々は初めてパイ中間子光発生反応の縦・横成分を分離した。その結果、縦成分にはデルタ成分の寄与が大きく影響するはずだが、終状態相互作用の取り扱い方に影響されることを示した。 私が中心になって実施した^3He(e,e′π^+)反応実験は、1核子によるパイ中間子発生過程はないので終状態相互作用の影響を大きく落とすことができる特徴があった。 実験は約1カ月間、マインツ大学で5カ国の共同チームで実施して、実験は成功した。現在、科研費の補助で購入した計算機でデータを解析中であるが、きれいに3重同時計数事象、^3He(e,e′π^+)は見えており、解析終了後、理論解析に入る予定である。
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