Research Abstract |
惑星の衝突破壊は,太陽系天体の成長・進化過程を研究する上で最も重要な物理過程の一つである。そこでこの衝突破壊過程の物理を理解するために,関連する素過程とその素過程どうしの相互作用を明らかにする実験的研究を行った.特に,太陽系外惑星領域での主要構成鉱物である氷を用いた衝突破壊実験を通して,氷天体の衝突破壊の物理を明らかにした.衝突破壊の素過程である,衝撃波の伝播及びクラックの発生・成長を観察するために,超高速度カメラによる氷内部の可視化撮影を行った.その結果,衝突速度〜10m/sでは,縦割れクラックが卓越し,その成長速度は,最高で1050±130m/sであることがわかった.一方,氷一氷高速度衝突においては,衝突速度の変化に伴う破壊の伝播速度の変化が発見された.回収した試料には衝突点近傍では,圧縮剪断破壊により発生した細粒のドメイン構造が観察され、遠くに行くと引っ張り応力により発生した縦割れクラックが卓越して観察された.クラックの成長速度もこの破壊形態に依存して変化している。衝突点近傍の圧縮剪断破壊領域では,2〜3.5km/sという氷の縦波速度に近い高速度で破壊が伝播し,衝突点から遠い縦割れ領域では,1km/s以下に減衰する.この結果は,衝突点近傍での破壊は,衝撃波に先立つ先行弾性波に起因することを意味している.先行弾性波は,ユゴニオ弾性限界を越える高圧力になると圧縮剪断破壊を伴い,氷中を減衰しながら伝播していくと思われる.一方,縦割れクラックは,衝突後充分に時間が経ち,弾・塑性波の反射により試料全体が変形を起こし,引っ張りの応力場が実現した後に発生・伝播して行くと思われる.本研究では,衝撃波を観測することはできなかったが,これは破壊の進行の方が衝撃波に先立つためであると思われる.
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