Research Abstract |
愛媛県大洲地域の野外地質調査を実施し,北部秩父テレーン,黒瀬川テレーン,南部秩父テレーンの分布状況および構造関係を明らかにした.従来,この地域の秩父帯の地帯区分は不明確であったが,各テレーンが北傾斜の低〜中角度衡上断層で境されることが判明した.このことは,南部秩父テレーンと北部秩父テレーンが黒瀬川テレーンの構造的下位でつながっていないことを意味する. 南部秩父テレーンについては放散虫化石の産出記録が豊富で,海洋プレート層序の復元が行えるが,北部秩父テレーンは変成作用を被っており年代決定に耐える放散虫化石を得ることができなかった.しかし,調査地域東方では泥質岩より,前期ジェラ紀の放散虫化石が得られており,ジェラ紀新世ないし白亜紀古世の砕屑岩からなる南部秩父テレーンとは明瞭に年代差があることがわかる.このことは,南部秩父テレーンと北部秩父テレーンとでは,付加体の形成時期が異なることを示している. テレーン間の構造関係および放散虫化石による年代データから,四国西部地域では,黒瀬川テレーンナップ説は成立しない可能性が高い.今後,北部秩父テレーンについて放散虫化石の抽出に努め,海洋プレート層序の詳細な復元が必要である.また,他地域の秩父帯においても同様の検討を行って行きたい. なお,本研究の成果の一部は,平成8年4月に東北大学で開催される日本地質学会において発表する予定である.
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