Research Abstract |
微細黄銅鉱と閃亜鉛鉱の共生組織は“黄銅鉱病変組織"と呼ばれ,その組織は交代反応もしくは同時沈殿により生じたと考えられている。そこで,天然試料と両生成機構による合成試料に対しSEM,TEM観察とAEM分析を行い,交代・同時沈殿両組織の判断規準並びに両機構より生じた組織の特徴について検討した。 (SEM組成像観察) 豊羽鉱山産試料では閃亜鉛鉱を切る黄銅鉱細脈に沿ってラメラ状・粒状の黄銅鉱が観察され,鉄に富む閃亜鉛鉱中にラメラ状黄銅鉱が出現することは交代反応の合成試料の特徴と一致する。長時間反応させた合成試料では閃亜鉛鉱は多孔質となり、黄銅鉱包有物は塊状の形態を呈することから,交代反応での微細黄銅鉱の形態は閃亜鉛鉱組成及び反応時間に大きく依存する。同時沈殿により生成された合成試料及び餌釣・古遠部両鉱山産試料は鉄に乏しく,その変化も殆どみられない。両鉱山産試料では数μm以下の不規則粒状黄銅鉱が観察され,同時沈殿の合成試料に類似する。 (TEM観察・AEM分析) AEM分析結果ならびに電子線回折像から豊羽・餌釣鉱山産病変組織内の微細包有物は黄銅鉱と考えられ,閃亜鉛鉱とはトポタキシ-の関係をもつ。豊羽鉱山産試料のラメラ状黄銅鉱(長径0.2〜3.3μm,幅0.05〜0.8μm)は(100)面に平行な方向に伸長している。閃亜鉛鉱との境界は複雑に入り組んでおり,刃状転移のような欠陥が観察されることから,両者はsemicoherentな関係にあると考えられる.一方,餌釣鉱山産試料では黄銅鉱(長径0.5〜1.2μm)は紡錐状・粒状のより自形に近い形態を示し,豊羽鉱山試料に見られた著しい欠陥は両結晶の境界付近では観察されない. 以上の結果より,交代反応及び同時沈殿を識別する判断基準としては黄銅鉱の形態と閃亜鉛鉱内の欠陥分布等が挙げられ,それらを知る上でSEM,TEMによる研究は極めて重要である.
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