Research Abstract |
本研究の主要な結果および新たに得られた知見は以下の通りである。 1.超純水製造装置の導入をはじめ,テフロン製非沸騰蒸留装置の作成,テフロン製エアフィルターによる実験用空気の清浄化などによって,岩石中の微量元素,同位体を分析するために不可欠な低汚染環境を実験室に実現することができた。 2.千島弧の火山岩のB,Be含有率およびB同位体比を測定した。B/Be比,B同位体比には,いずれも火山フロントで最も多角,背弧側に向かって連続的に減少するという明瞭な島弧横断方向の変化が認められた。火山フロントのB/Be,B同位体比は,MORBやOIBに比べて著しく高く,火山フロント下のマントルが,沈み込むスラブから放出された水を主体をする流体によって強く汚染されていることを示している。この火山フロントのB同位体比(+5±1‰)は,海水との相互作用によって変質したMORBに一致し,海洋堆積物のそれとは明らかに異なっている。このことは流体が主としてスラブ中の変質玄武岩から放出されたものであることを示唆している。一方,背弧側ではB/Be,B同位体比ともにMORBの値に近く,スラブ起源の流体によるマントルの汚染が火山フロント下に比べてはるかに小さくなっていることを示している。これらの事実は筆者が伊豆弧において認めた傾向と一致し,それらが,島弧一般になり立つ事実であることを示唆している。 3.カムチャッカ弧火山岩についても同様な測定を行った。千島弧と異なり,火山フロントのB同位体比には約6‰の大きな変化が認められるが,その最高値は千島のものと一致している。このことは,千島弧と同様なマグマが上昇の過程でB同位体比の低い大陸地殻物質を様々な程度に同化していることを示している。
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