Research Abstract |
長鎖アルキルを有するTTFドナー分子、EDT-TTF(SC_<18>)_2およびEDT-TTF(SC_<22>)_2を取り上げ、種々のカウンターアニオンとの結晶化試みた。カウンターアニオンとして四面体型ClO_4^-,八面体型PF_6^-,直線型IBr_2^-,AuI_2^-、また有機アクセプターであるNi(dmit)を取り上げ、上記ドナー分子との電荷移動塩(および錯体)単結晶作製を電解法を用いて試みた。各種溶媒中(dichlorometane,dichloroethane,chloroform,chlorobenzen)において作製を行ったが、単結晶サンプルは得られなかった。 そこで、なぜI_3^-のみが安定した電荷移動塩結晶を与えうるのかを調べるために、I_3^-アニオンの結晶中での分子配向をヨウ素LI-XANESスペクトルの偏光依存特性より調べた。その結果、I_3^-アニオンはEDT-TTFドナー部分の先端二つのCH_2が形成するトンネル内に配置すると考えると、このXANES測定結果を含む他の実験結果を良く説明できる事が分かった(結果の一部をThe Seventh International Conference on Organized Molecular Filmsで発表)。 またこれに関連して、ドナー部分をEDO-TTFに置き換えたEDO-TTF(SC_<18>)_2のLB膜作製およびその物性測定を行った(第43回応用物理学関係連合講演会にて発表)。この系では上に述べた二つのCH_2部分はより近寄っており、このような形状の変化が電荷移動塩形成にどのような影響を与えるか、が注目される点である。様々なハロゲンガスによるド-ピング(I_2,IBr,ICl,Br_2)を試みたが、ドープ直後に+1価のEDO-TTFダイマーが形成された後、安定な部分電荷移動状態を経ることなく時間の経過とともにもとの中性状態へ戻っていく事が赤外吸収およびX線回折測定より明らかになった。従って分子形状の変化も電荷移動塩形成に関与していることが示唆された。
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