Research Abstract |
I-III-VI_2族カルコパイライト型化合物で,青色発光素子用材料の候補の1つであるCuAlSe_2エピキタシャル膜を分子線エピタキシ-(MBE)法により作製し,その結晶学的,電気的及び光学的性質に関する評価を行った.CuAlSe_2薄膜の諸性質はその膜厚に依存して大きく変化することが明らかになった.2次イオン質量分析法によるヘテロ界面の組成分析の結果,GaAs基板からのGaの拡散が認められ,膜厚が0.5μm以下と薄い場合にはCuAl_<1-X>Ga_XSe_2固溶体が形成されている可能性があり,結晶性の劣化と関連があると考えられる.薄い膜は高抵抗で,ホール測定による電気的性質の評価を行うことができたなかった.また,フォトルミネッセンス(PL)測定でも,バンド端発光は観測されず,1.6eVにピークをもつ深い発光が優勢であった.一方,膜厚が0.8μm以上になるとX線維回析ピークの半値幅が小さくなり結晶性が改善されることがわかった.このとき薄膜はノンドープであるにもかかわらず,無抵抗なp型伝導を示し,そのキャリア濃度は77Kで10^<17>-10^<18>cm^<-3>であった.ホール移動度は室温で230cm^2V^<-1>S^<-1>,77Kで108cm^2V^<-1>S^<-1>であった.これは,低温においてイオン化不純物散乱が移動度を律速しているためである.また,キャリア濃度の温度依存性からアクセプタの活性化エネルギーは80meVと142meVと求められ,PLスペクトル中に観測されるferee-to-bound発光の束縛準位のエネルギー位置とほぼ一致することが明らかになった.活性化エネルギーの値から,これはカルコパイライト型化合物においてしばしば観測される,I族(この場合はCu)空孔がつくるアクセプタ準位であると考えられる. 従って,本研究において,電気的特性に優れるPN接合を作成するためには,CuAlSe_2/GaAs界面におけるGa原子の拡散及び,結晶成長時にCu空孔濃度をを制御することが不可欠であることがわかった.
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