Research Abstract |
イオン性がつよい閃亜鉛鉱型構造をとるCuClに注目し,ヘテロピエタキシ-における基板表面欠陥と初期核発生の関係について調べた。CuClは,基板として用いたMgO(001)ならびにCaF_2(111)上でそれぞれ島状成長する。MgO(001)上では,(111)を成長面とし,CuCl[11^^-0]//MgO[110]の対称性が大きく異なる面内原子配置をとる。この系では,原子間力顕微鏡(AFM)観察から,核発生場所が基板のステップエッジの存在と直接的な関係を持たないことがわかった。一方,格子整合のよいCuCl(111)/CaF_2(111)では,明らかにステップエッジで初期核が生成した。そして,成長初期を詳しく検討した結果,この違いが,CuCl(111)/MgO(001)のStranski-Krastanov(SK)型の成長によることを明らかにした。MgO(001)上に,1分子層(ML)相当のCuClを析出させたときの反射高速電子線回折(RHEED)像は,基板格子に対して,明瞭な2倍周期構造および弱い4倍周期構造のストリークパタンであり,面内の対称性は,4回対称でMgO(001)と同一であった。一方,CuClをさらに析出させた場合に形成される3次元の島の上面のCuCl(111)からのRHEED像は,1 MLの場合とは全く異なった周期性を与える図形であった。しかも,MgO[010]方向から15°ずれた方位から観測され,基本的に面内で3回対称であった。この結果は,成長最初期において,MgO(001)上に2次元的にCuClが吸着した層が形成され,その構造は,基板のMgO格子に強く影響されていることを示した。また,RHEEDとAFMの観察により,成長した膜を加熱した場合,MgO(001)上のCuCl吸着層が,3次元の島よりも高温まで再蒸発せず,基板とより強く結合していることがわかった。以上から,CuCl(111)/MgO(001)のSK型成長を結論した。SK型成長は,初期吸着層が新たに清浄な基板としての役割を果たすことから,その核発生が,元の基板のステップエッジなどの表面欠陥に影響されにくいと考えられる。
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