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¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1995: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
本研究では,聴覚における情報処理過程を「聴覚系がその非線形な特性により,音の物理スペクトルを主観スペクトルに変換する過程である」とする仮説を設けた.また,その変換に際しては,聴覚系の特性の中でも,複合音の成分間に生ずるマスキング現象(相互妨害現象)が支配的であると仮定した.本研究の特色は,聴覚においてはスペクトルの差異が音色の相違として知覚されることを利用した聴取実験により,以上の仮定の妥当性を検証することである.本年度は,高調波構造を有する広帯域複合音を対象として,二つの観点から検討を行った. 1つは,広帯域音の音色知覚に及ぼす,聴覚フィルタ群(聴神経系の応答として観測される非線形なバンドパスフィルタ群)の寄与に関する検討である.マスキング現象は主観実験により観測される現象であり,その背景にある生理学的現象は聴覚フィルタの特性として観測される.昨年度までに,刺激音の物理スペクトルの変化による音色の変化は,聴神経の興奮パタンから推定した聴覚フィルタ群の特性を考慮することにより,ある程度まで説明できることを示した.本年度は,そのフィルタ群の特性に聴神経の側抑制までを考慮し,音色の相違として観測された聴取実験の結果を,そのフィルタ群からの出力によりほぼ完全に説明できることを明らかにした.このことから,聴覚系における情報処理過程に,聴覚フィルタ群が大きな寄与を及ぼしていることを明らかにした. もう一つは,基本周波数が異なる高調波構造複合音は,音色だけでなくピッチ(主観的な高さ)も異なって聞こえることに着目したものである.刺激音の音色とピッチを評価した結果から,聴覚系における情報処理過程では,刺激音のパワースペクトルの形状の分析過程だけでなく,位相スペクトルまで分析していることが示唆された.来年度は,この位相スペクトル分析過程も詳細に検討する予定である.
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