Research Abstract |
室内音場を取り囲む壁面には,コンクリートのように音響的に剛なものや,グラスウ-ルのような多孔質吸音材,材料自身の振動によって吸音効果をもつ板材など様々なものが存在する.このうち,後者の2種類の材料については,吸音のメカニズムが複雑であるため,これらの材料の存在を考慮して室内空間の音場を解析するのは非常に困難である.本研究では,室内空間を計算機を用いて解析するという立場から,これらの複雑な吸音メカニズムをもつ材料の音響特性をモデル化することを試みた. 特に,これらの材料のうち板振動吸音を取り挙げ,音響特性をモデル化するための手掛りとして,音場内のある点から材料を見込んだ音響アドミタンス,すなわち等価音響アドミタンスを定義した.これを,バフルに取りつけられた板材の周りの音場に適用し,板材の寸法に比べて波長が十分に長い場合には,等価音響アドミタンスによって板材の吸音特性を直接モデル化できる可能性を示した.この結果については,日本音響学会の研究発表会や建築音響研究会などで報告しており,現在論文として投稿を検討している. また,これらの材料の音響特性のモデル化を難しくしているのは,材料の吸音特性自体が,室内音場の影響を受けて変化するためであると言われている.しかし,その影響を定量的に検討した報告は見ることはできない.本研究では,多孔質吸音材を例にとり,室内音場と材料間の相互作用について検討を行った.音源から受音点までのインパルス応答を解析した結果,室内音場で励起されるモードが材料の音響特性に影響することを明らかにした.この結果については,平成8年3月の日本音響学会の研究発表会において報告する予定である. 来年度は,多孔質吸音材・板材の音響特性をより詳細にモデル化するとともに,板振動と室内音場の相互作用についても検討を行うことを計画している.
|