Research Abstract |
超音波スペクトラム顕微鏡を用いて,材料の局所領域における応力-音速の相関関係を調べるとともに,巨視的応力と微視的応力が音速に与える影響の相違を明らかにすることを目的とした系統的実験を行った.得られた結果は次のとおりである. (1)表面波速度に及ぼす試料特性の影響 真の応力-音速関係を調べるには,音速に影響を及ぼす試験片特有の因子を把握する必要がある.そこで,表面波速度に影響を及ぼすと考えられる代表的因子,すなわち試験片表面性状,結晶粒径,試験片の設置状態および環境温度について,それらの影響を音速の周波数依存性評価を交えて定量的に調べた.その結果,音速の測定精度(±2m/s)の範囲内でそれらの影響をなくす条件を明らかにすることができた. (2)表面残留応力と音速の関係 試験片表面の加工層に存在する残留応力が表面波速度に及ぼす影響を調べた結果,約400MPaもの圧縮残留応力が存在しても,その影響はほとんど無視できることがわかった.この理由は,加工層内の残留応力が深さとともに急激に減少していることに加え,表面波の有効伝搬深さが加工層に比べて数倍以上大きいことによる.また,この結果は音弾性理論によっても検証できた. (3)応力付加装置の製作 任意の応力状態での表面波速度測定を可能にするための応力負荷治具を製作した.金属,セラミックスおよび粒子分散複合材を試験片とした実験を行ったところ,応力-音速の相関関係には明らかな相違,すなわち材料による正と負の相関が観察された.この原因は,相応力などの微視的応力状態の相違によるものと考えられた.
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