Research Abstract |
本研究では,蒸気タービンロータとして15.8年使用されたNi-Cr-Mo-V鋼を供試材とした。蒸気タービンロータのメタル温度は部位によって異なる。メタル温度が60℃,268℃,441℃,538℃の部位より標準サイズ試験片及び1/10サイズ試験片を採取・加工し,計装化シャルピー衝撃試験を行い,延性-脆性遷移曲線を求め,延性-脆性遷移温度(DBTT)及び上部棚温度域吸収エネルギー(USE)により経年劣化度を評価した。ミクロ組織の観察は光学顕微鏡,SEMにより行った。炭化物の解析はEDAX装置付きのSTEMを用いて行った。得られた知見を以下にまとめる。 1.1/10サイズ試験片により経年劣化の評価が可能であることがわかった。 2.DBTTはメタル温度の増加とともに増加し,441℃で最大値となり,538℃では低下する。一方,USEはメタル温度の増加とともに減少し,441℃で最小値となり,538℃では増加する。これらの結果より,メタル温度441℃の試料で最大の脆化が生じていることが分かった。 3.本供試材には,Fe&CrリッチなM_<23>C_6型,Fe&MoリッチなM_6C型,Mo&VリッチなM_2C型の3種類の炭化物が存在する。 4.メタル温度の増加とともに結晶粒界に析出した炭化物は粗大化し,それがDBTTの増加とUSEの減少をもたらす。 5.538℃の試料では,粗大化した結晶粒界炭化物の数が減少し,M_2C型の微細な炭化物の粒内への均一な析出が観察され,それがDBTTの低下とUSEの増加をもたらしたものと推定される。
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